• 上: Karsten KroeningのYouTubeチャンネルより。下:日本のファッション・モデル、Junki Ichikawa氏のv-logのサムネイルより。

    英語訳 (English version here)

    所有物が持ち主のアイデンティティの拡張となる概念 (Belk, 1988)は、身に付ける者と衣服の選択の間にある関係性を探る学術研究において取り上げられてきた。特に古着やヴィンテージの衣服を好む者たちにとって、最新ではない過去のデザインを収集し身につけることは、そのアイデンティティの形成において何か特別なものをもたらすようだ。

    RouxとKorchia (2006)はなぜ人々がヴィンテージの衣服を好むのか、四つのタイプに分けて分析している:人とは被らない個性への欲求、社会的な策略と購買の効率性、ノスタルジア、そして過度な消費への拒絶である。ファッション産業の多様な流通チャンネルは、消費者に「何を着るか」の選択肢を与えている。

    しかしながら、過去の研究は常に「所有物」と人々の自己表現を解明するために、その「所有者」もしくは「着用者」の側面に注目してきた。このエッセイは「衣服」そのものの存在への興味 — 衣服は常に着用者の一部である。しかしながら所有者が喪失した時に一体何が起こるのか?— に着目したい。生産された衣服は常に何らかの理由によって、人から人へ、所有者の変動が起こりうる。古着やヴィンテージの衣服は特にこの循環を体現している。では、特有の所有物と着用者の関係性は永遠だろうか — 答えは「いいえ」だろう。なぜならそのその所有者の交替のためである。「アーカイブ・ファッション」と呼ばれる、過去の貴重なデザイン・コレクションの服の収集を指す特異な分野は、その領域を考える上で興味深く、その範囲はさらに第二次世界大戦中にホロコーストにおいてユダヤ人収容者から没収された、「衣服」から発せられる、生々しさを含むイメージにまで行き着く。衣服と「所有者の不在」の関係性の研究は未開拓な分野であり、このエッセイはその分析の可能性を模索したものである。

    アーカイブ・ファッションはデザイナーズ・ブランドの過去のコレクションからの洋服やアクセサリーを示す名称であり、博物館の「アーカイブ(archive)」に起因する。ファッション業界においてアーカイブ・ファッションは昨今トレンドの一つとして注目されてきた。それはハイ・ブランドの遺産の保存とともに、不必要な消費を防ぐサステナビリティとしての社会責務に関与される。

    しかしながら、この解釈は少々表面的とも言える。アーカイブ・コレクション/ファッションはより多岐なコミュニティの中で取り上げられている。例えば、1990年代後半から2000年代前半のメンズ・デザイナーの貴重なピースを収集するトレンドは、ここ数年、若いファッション中毒者たちを惹きつけてきた。Yu (2020)はこの流行をFarfetchの中の記事で定義している。着目すべき点はこのような「アーカイブ」はクチュールのレガシーを強調しているのではなく、デザイナーの個人的な経験や好みを反映したデザインの中に込められた、文化的なコンテクストを重要視していることである。このムーブメントは若い男性達の「特別」で「クール」なデザインを所有したいという継続的な欲求によって始まっている。

    若きファッション・ユーチューバー、 Karsten Kroeningはこのアーカイブ・ファッションの歴史について2024年に彼のチャンネルで解説している。このトレンドは2010年頃から浮上した。 Karsten はアメリカの若いコレクターであるDavid Casavantを中心人物として言及している。彼がある日、ebayで約100ドルのラフ・シモンズのジャケットを落札し、これが全ての始まりだったと伝えている。後のDavidの膨大なラフ・シモンズ・コレクションは若く新しいファッション熱狂者たちによって注目され、セレブリティが彼から借りたコレクションを身につける様子がソーシャル・メディアによって広く知れ渡るようになった。このような経緯は現代においてより一般化している。CatalaniとChung (2005)はヴィンテージコレクターとディーラー間の違いを、収集という段階で得た「感情的な成長」として示唆している。熱心なコレクターは時に彼らの収集物を他者と共有するための調停者となりうる。それは所有を通じて確固たる自信を得た収集家が、外の世界への間口を開く準備ができたことを意味し、コレクションの文化的な背景を所有する喜びを他人と分かち合うことを、より重要視するようになるからである。

    日本においてもこのトレンドは注目されている。人気の男性ファッション・インフルエンサーやモデルがSNSや自身のYouTubeチャンネルを使って発信している。コレクターたちは「掘り出し物」を見つけるため、習慣的にオークションサイトやフリマサイトの画面をスワイプし続け、手に入れたピースをYouTubeで紹介し、視聴者たちとコメント欄で交流する。彼らは時にカメラを片手にv-logを撮影し、そのディテールを触って確かめるために、東京や大阪のような大都市の片隅にある実際の「アーカイブ・ショップ」を訪れる。彼らはよく掘り出し物を見つけるために「ディグる」という言葉を使う(英語のdigに起因)。これは元々DJが貴重なレコードを買い求める際に使われていたものである。

    そのような「レアで貴重なピース」がその所有者たちのアイデンティティの一部となり、それらを収集し着用することによって自己満足を高める一方で、その衣服そのものは、最終的に売買によって他の所有者へと渡っていくのである。ほとんどの若いコレクター達(20代)は最新の流行に非常に敏感だが、コレクションを集め続ける金銭的余裕もない。オンラインのネットワークがさらにこの環境を加速させる。アーカイブ・ファッションの衣服は、その元のデザイナー達が込めた物語を受け継いだ過去の所有者の、わずかな痕跡を含んでいる。しかしながら、その痕跡が「選択」ではなく「剥奪」によって残された場合、衣服と所有者の関係性はどのように変わるのだろうか?

    Belk (1988)はまた、アイデンティティの転向は精神病院、刑務所、収容所、そして寄宿舎など、人々が強制的にある特異な制度に従わなければならない環境の中で、個人的な所有物を剥奪された時に起こると説明する。そして個人は「共同体」として認識させられるために制服や髪型、そして態度も含め、揃いの「新しい所有物」を与えられる。ここでもBelkの指摘は個人的な財産を奪われた人々のアイデンティティの喪失についてにとどまり、その剥奪された「所有物」については言及されない。

    この現象は個人の所有物とその所有者達の関係性を表す、ある強烈な存在をより想起させる — 第二次世界大戦中のホロコースト内で没収され放棄された、ユダヤ人収容者達の個々の衣服である。

    Waligórska と Sorkina (2023) はユダヤ人収容者の所有物としての財産の行方を調査し、衣服は私たちの社会の中で他者と区別するための多様な役割を持つが、「身体の付属物」でもあると指摘し、「戦後のヨーロッパ内で収容者達の衣服や靴は着用され続けた」と述べている。残存したユダヤ人収容者の所有物は他者から他者へと引き継がれていった。以前、誰かの物であった衣服が膨大な山積の中から仕分けされ、非ユダヤ人の家族のもとに渡り、時には生き残ったユダヤ人達の戦後の生活を助ける財産にもなった。著者達は「アイデンティティ」に関わる、その土地と個人的な所有物の歴史について質問を投げかける—それは時間を超え、絶えず変動する状況下でどのように保たれるのか。このような事実は些細な物事として見過ごされてきたと言える。なぜなら特に混乱下において、人々は常に金銭的な意味においての物の価値を重要視し、行動するからだ。

    コレクションした衣服を意識的に次の所有者へと手放していくアーカイブ・ファッションのコレクター達とは違い、当時のユダヤ人達は着ていた衣服との突然の切り離しに直面する — それらは与えられた物ではなく、奪われた物であるが、他者によって着用され続ける。個人の所有物の譲渡は、それが選択的にしろ強制的にしろ、持ち主のアイデンティティを強めるはずの関係性を、どこか曖昧にしてしまう可能性を秘めている。かつては着用者のこうありたいという姿の反映であったものが、別の誰かに付随するものになる。

    ただの物質として生産され、やがて個人のアイデンティティの拡張となる衣服は、所有者よりも生き延びる。衣服はアイデンティティとなる一方、完全にではない。それは一種の矛盾した二面性を持ち、その流動性の中で、たくましい持続性と亡霊的なものが共存している。

    アウシュビッツ収容所の倉庫から溢れる収容者達から没収された衣服の山。1945年1月以降撮影。United States Holocaust Memorial Museum, courtesy of National Archives and Records Administration, College Park.

    References

    Ancel, Jean. “Seizure of Jewish Property in Romania.” In Confiscation of Jewish Property in Europe, 1933–1945: New Sources and Perspectives, 43–56. Washington, D.C.: United States Holocaust Memorial Museum, 2003.

    Bianchi, M. 1997. “Collecting as a Paradigm of Consumption”, Journal of Cultural Economics, Vol. 21 no 4, p. 275–289.

    Belk, Russell W. “Possessions and the Extended Self.” Journal of Consumer Research 15, no. 2 (1988): 139–168.

    Catalani, Anna, and Yupin Chung. “Vintage or Fashion Clothes? An Investigation inside the Issues of Collecting and Marketing Second-hand Clothes.” University of Leicester, 2005.

    Roux, Dominique, and Michaël Korchia. “Am I What I Wear? An Exploratory Study of Symbolic Meanings Associated with Secondhand Clothing.” Advances in Consumer Research 33 (2006): 29–35.

    Waligórska, Magdalena, and Ina Sorkina. “The Second Life of Jewish Belongings: Jewish Personal Objects and Their Afterlives in the Polish and Belarusian Post-Holocaust Shtetls.” Holocaust Studies 29, no. 3 (2023): 341–362. https://doi.org/10.1080/17504902.2022.2047292

    Weston, Nathaniel Parker. “Photographs of Jewish Clothing in Nazi Germany and the Shoah: Visual Records of Economic Assaults, Exploitation, and Plunder.” TEXTILE: Cloth and Culture 21, no. 3 (2023). https://doi.org/10.1080/14759756.2022.2141033

    Websites

    Brown, Annie. “Why ‘Singularity’ and ‘Archive’ Fashion Is Changing How We Get Dressed.” Vogue Australia, March 6, 2023. Accessed April 20, 2026. https://www.vogue.com.au/fashion/news/archive-fashion-trend/news-story/0494d29e146eda4862434a5184f0cff3

    Maria, Nina. “Hot, Trendy and Second-Hand: The Rise of Fashion Brand Archives.” 1 Granary, December 5, 2022. Accessed 20 April, 2026. https://1granary.com/industry/the-rise-of-archival-fashion/

    Yu, Stephen. “An Introduction to Archival Fashion.” Farfetch, June 4, 2020. Accessed 22 April, 2026.https://www.farfetch.com/style-guide/trends-subcultures/archive-clothing-and-archival-fashion-brands/

    YouTube

    Junkiichikawa. YouTube channel. Accessed 26 April, 2026. https://www.youtube.com/@junki_ichikawa

    Kroening, Karsten. “THE ARCHIVE FASHION PROBLEM.” YouTube video, 14:30. February 26, 2024. Accessed 22 April, 2026. https://www.youtube.com/watch?v=-vtoXzhscOc.

    OUR’s. YouTube channel. Accessed 26 April, 2026. https://www.youtube.com/@OURs8888
    (This Japanese fashion influencers’ channel regularly introduces archive fashion pieces from the 90s to the 00s with shopping vlogs and styling suggestions)

  • 英語訳 (English version here)

    5月2日〜17日の期間、東京、原宿の表参道ヒルズのスペース オーにて、inception (1976)という展覧会が開かれた。この展示は、原宿のユース・カルチャーを牽引してきた音楽プロデューサー、藤原ヒロシと、彼を中心とした複数人のプライベートコレクションから成り立ち、彼らが長年集めてきた70年代〜80年代のロンドンのパンク・ファッションの衣装が多数並ぶ。これらは全てマルコム・マクラーレンとヴィヴィアン・ウェストウッドがデザインと制作をし、セックス・ピストルズを始めとするミュージシャンやアーティスト達の着こなしによってその世界は完成された。そして藤原氏がキュレーションも務めたこのプロジェクトは、イギリスのパンク・カルチャーが海を超えて当時の日本の若者達をも魅了していった過程の、一つの原点を見せている。

    ロンドンでは50年代からかけて空前のブティック・ブームが始まり、様々な背景を持つ若者達が独自のブランディングでビシネスを始め、お互いのネットワークを作り上げてきた。その一方で、ほとんどの店は短命であった。しかしながら彼らが創り上げた様々なスタイルは今尚、現代のデザイナー達に影響を与えている。音楽がもたらすアメリカ文化、異国趣味が体現するドラッグとスピリチュアルへの探訪、そしてビアズリーを代表とするヨーロッパ的な退廃、英国の伝統と過去へのノスタルジー — それはモッズやヒッピー、ピーコックといった代名詞と共に、50年代から60年代にかけてジャンルとして確立していった。そしてこのブティック文化の一つの特徴は、ファッションと若い芸術家達の強い結びつきである。特に、カリスマ性のあるミュージシャン達は店の常連客であり、強力な広告塔でもあった。ビートルズもローリング・ストーンズも、ロンドンのブティック・カルチャーと深い縁があった。

    1971年、スコットランドにルーツを持つマルコム・マクラーレンもまた、当時パートナーであったヴィヴィアン・ウェストウッドともに、ロンドンのキングス・ロードに最初の店を立ち上げた。そして新たなユース・ファッションの歴史が幕を開けようとしていた。それまで主流だったピーコックやヒッピーのスタイルに反旗を翻した彼らの大胆で挑発的なセンスは、すぐに注目を集める。マクラーレンはまたのちにセックス・ピストルズのメンバーを集めて音楽とファッションの双方から彼らをプロデュースする。それが ”パンク”スタイルの定義となっていく。

    キングス・ロードに開店した最初のブティック、Let It Rockから始まった彼らの物語は、幾度かの店名の変更を経ながら名作を生み出していく。展示はブティック時代の代表作から、Worlds Endに改名後の、1980年代にウェストウッドが本格的にランウェイショーに参加し始めた初期のものまで多岐にわたる。 

    ウェストウッドは袖をカットした数々のアイコニックなTシャツをデザインした。会場では袖口に馬の尾の毛をあしらい、VENUSのスタッズ文字と鎖で装飾された、今では非常に貴重なコレクションも展示されていた。

    1976年から始まったSEDITIONARIESは彼らの四番目の店名であり、マクラーレンとウェストウッドのコンビの黄金期と言っても過言ではない。例えばスコットランドの伝統のタータンにミリタリーウェアの要素を落とし込んだパラシュート・ジャケット。そして、鮮やかな色合いの緩い鍵編みのニット、挑発的なプリントを施したボロボロのモスリンのトップス、エッジの効いたブーツ — まさしく一度見たら忘れられないような存在感を放つ。 

    タータン・チェックと、パラシュートジャケットのミリタリー要素を合わせたSEDITIONARIESを代表するデザイン。
    セックス・ピストルズのシングル、「Anarchy In The UK」の世界観を補完するためにデザインされた、アナーキー・シャツのオリジナルも展示されている。わざと裏返した「くすんだ汚い色」のシャツに囚人服のような縦縞のペイント、パッチワークやスローガンを施した。
    マクラーレンとウェストウッドの考案したボンテージ・スーツの要素が盛り込まれたズボン。太腿の裏と裾に施されたジッパー、そして足の部分を横断するストラップが特徴的なデザインは、米軍のベイカーパンツがインスピレーションになっている。

    一斉を風靡したパンク・スタイルは、1980年代に入ると、そのデザイン性に新たな変革が訪れる。マクラーレンはニューヨークのストリート・カルチャーの影響をより強く受けていく。彼自身がプロデュースしたシングル曲「バッファロー・ギャルズ」はすでにラップやスクラッチ、アフリカン・ミュージックを組み合わせた独創的な試みであり、そのファッション・デザインもまた、彼らの新たなヴィジョンを体現する大きな役割を担っていた。

    1982年AWの’Nostalgia of Mud’コレクションより。南米の伝統文化からもインスピレーションを得ている。

    例えば1983年の秋冬のコレクション、Witchesはマクラーレンとウェストウッドのコンビの最後のコレクションであり、ニューヨークのグラフィック・アーティスト、キース・ヘリングのデザインのモチーフが使われている。同年リリースされた「バッファロー・ギャルズ」を含む、LPアルバムDuck Rockのジャケットにヘリングのグラフィックが使われた縁から生まれたコレクションである。3つのベロが重なったかのような、白のレザースニーカーも、ヒップ・ホップ・カルチャーの独創的な解釈である。 

    1983年のコレクション、Witchesより、キース・ヘリングのイラストのモチーフが使われている。
    同じくWitchesよりベロが3重に重なった特徴的なデザインのレザースニーカー

    東京での開催、そして日本人の立場として興味深いのは、このロンドンでのパンクファッションの流行が、近代(特に90年代からの)の日本のカルチャーベースのファッションブランドへの文脈に繋がっていることである。藤原ヒロシとUNDERCOVERのデザイナーの高橋盾が2002年に出版した写真集、その名も SEDITIONARIESは今回の展示物も含む彼らの膨大なプライベートコレクションから成り立つ。藤原氏は今回の展覧会を単なるパンクの展覧会、というより1970年代からのパンクのムーブメントが、現在まで繋がっているという過程を見せたかったと言う。パンクの定義も日本では様々な受け取られ方をしている。「お金をかけないものこそパンク」と言う考えもある一方、藤原氏はマクラーレンとウェストウッドのデザインはある意味贅を尽くした「アート」ではないかと語る。

    また藤原氏と同様、マクラーレンとウェストウッドのパンクファッションに強い影響を受けた高橋盾はセックス・ピストルズのコピーバンドの元ボーカルであり、1990年にUNDERCOVERを立ち上げた。undercoverとは、もともと諜報活動に関連するような、秘密裏に行動する意味合いを持つ単語だが、高橋氏は90年代のインタビューで「パクリ」と言う意味も含まれていると語っている。「服ではなくノイズを作る」を掲げ、デザイナー自身の個人体験や思想から生み出されるものをより強調した、90年代から世界的にも普及していく、よりコンセプチュアルなファッションブランドの一つの形態として昇華していく。  

    パンク・カルチャーは間違いなくそして純粋に、UNDERCOVERの初期のデザインから重要な要素となっている。裏原のショップでシルク・スクリーンのTシャツを製作していたこのインディー・ブランドは、東京でのコレクションの発表も経ながら、徐々にそのをデザイン性を磨き上げていく。そして、2002年のパリのファッションウィークへに参加をきっかけに、コム・デ・ギャルソンの川久保玲らモードのデザイナーの影響も強く受けていく。マクラーレンとウェストウッドの物語は、遠い異国の若者を夢中にさせファッションの世界へと導き、その物語はまた後にアヴァンギャルド・ファッションとの出会いを経て、新たな枝葉を広げていくのである。

    このinception(1976)では展覧会のコンセプトも含め、年代も含めたそれぞれの展示物に対して解説が一切ないのが特徴的であった。これは2002年に出版された藤原氏と高橋氏の写真集のコンセプトと同じであり、コレクター達の一貫した考えがあるように感じられる。見る人に先入観を与えずに「デザイン」と存在感そのものを感じてもらう—その試みもキュレーションとしての一つの「方法」となり得るのか。これは美術館・博物館での公的な企画と、個人企画の違いを踏まえた上で、歴史的・文化的な資料を見せる展覧会の役割(学ぶ場か否か)を考える興味深い機会となった。 

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    本記事のマルコム・マクラーレンとウェストウッドのデザインに関する一部の内容は、「マルコム・マクラーレン 評伝」の著者であるポール・ゴーマン氏とのやり取りにより、貴重な情報をいただきました。ここに感謝申し上げます。

    Reference

    Gorman, Paul, The Life & Times of Malcolm McLaren: The Biography [評伝 マルコム・マクラーレン]. Translated by Michiyo Kawada. Tokyo: East Press, 2024.

    Gorman, Paul. “The Anarchy Shirt.” Dazed, May 1, 2013. Accessed May 17, 2026.https://www.dazeddigital.com/fashion/article/16066/1/the-anarchy-shirt.

    Nakajima, Toshiko. “UNDERCOVER: 20-nen-buri no taiwa (1).” relax × SHIBUYA PARCO. Accessed May 18, 2026. https://shibuya.parco.jp/page/relax/feature/detail/015_1.php

    Suzuki, Tetsuya. “Hiroshi Fujiwara no Kongetsu Ki ni Natta Mono, Katta Mono ‘Monthinception (1976)’—Rensai: Hiroshi Fujiwara What I Want.” GQ Japan, May 10, 2026. Accessed May 18, 2026. https://www.gqjapan.jp/article/20260510-gq-may-hiroshi-fujiwara.

    Victoria and Albert Museum. “Bondage Suit.” V&A Explore the Collections. Accession no. T.252&A-1989. Designed by Vivienne Westwood and Malcolm McLaren, 1976. Accessed May 16, 2026. https://collections.vam.ac.uk/item/O72586/bondage-suit-vivienne-westwood/.

    Victoria and Albert Museum. “Vivienne Westwood: Punk, New Romantic and Beyond.” V&A, last updated April 17, 2024. Accessed May 18, 2026. https://www.vam.ac.uk/articles/vivienne-westwood-punk-new-romantic-and-beyond.

    Victoria and Albert Museum. “Witches: Raincoat and Belt, Vivienne Westwood and Malcolm McLaren.” Accessed June 28, 2026. https://collections.vam.ac.uk/item/O136252/witches-raincoat-and-belt-vivienne-westwood/.

    Westwood, Ben. “Nostalgia Of Mud.” Vivienne Westwood. February 20, 2014. https://www.viviennewestwood.com/en-jp/westwood-world/worlds-end/nostalgia-of-mud/.